「いま、会いにゆきます」

いま、会いにゆきます DVD-BOX 〈初回限定生産〉

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監督: 土井裕泰
原作: 市川拓司(小学館刊)
脚本: 岡田惠和
出演:竹内 結子 中村 獅童、武井 証、浅利 陽介、平岡 祐太、大塚 ちひろ、中村 嘉葎雄、市川 実日子、YOU、松尾スズキ、小日向 文世

ちゅらさん」でもお馴染みの岡田さんの脚本であり、竹内結子さんが出演されているということで、昨年の文化の日に観たのが最初でした。

ベストセラーだったのであまり興味は無かったのですが、たまたま手に取った雑誌に市川さんのインタビュー記事が載っていたのがキッカケで、原作を読んでみようと思った天邪鬼なわたくし(^^;

翻訳小説を髣髴とさせる文体が何だか新鮮で、巧の不器用さというか、人柄が感じられるような作品でした。綺麗なストーリーだなぁと思ったのを覚えています。

原作がそんな感じだったので、映画の方はどんな作品に仕上がったのだろうという興味が先行して観にいった感があります。実際、原作ほど心を打たれることはありませんでしたが、よく頑張ったなぁというのが感想。巧と澪の少年少女時代の配役もよく似た俳優さんで(ある意味感動)、時間の流れは抵抗無く観る事が出来ました。

終盤近くに澪の視点で時間の流れが明確になるシーンがあるのですが、これは映画独自のもの。良かったです。つじつまがビシッと合うので納得しました。(正直、原作のようにはうまくいかないと思っていたので)。映像でしか表現し得ないこと。それが心地よい作品でした。

私的に惜しいなと思ったところは、下記の数点です。(恐らく原作の押さえどころの違いでしょうが)

1年前に亡くなったはずの澪が、約束どおり雨の季節に戻ってくる。全ての記憶を無くした澪と、巧と佑司の生活が始まる。巧が発作を起こしたときに、原作の澪はこう言います。
「私がいなくなったら、誰があなたを病院に連れて行けばいいのかしら」

ここから、澪は二人が自立できるように準備をしていくのです。この時点ですでに澪は自分の運命を知っているのですが、だからこそ、巧にできないことなら息子の佑司に・・・と家事を教え、生きていく術を教えていきます。二人のことが心配で仕方がないのに自分は長くは居られない、その葛藤の中でこれから二人が自立していけるようにと決意するキッカケだと私には思えたのですが、あの台詞が無かったのが残念。

もう一点は、息子の佑司を、巧と澪が望んでこの世に向かい入れたのだという澪の台詞が、映画ではどうしても深く伝わらない点でした。原作のイメージが強すぎたんだとは思うのですが・・・。

自分が産まれてきたことで母親を死なせてしまったのではないか?小さな胸で一生懸命自問自答している姿は、限られた時間の中でストーリーを展開しなければならない映画にとって、細かく描けなかったのも仕方がないとは思います。もう少し描けたら、澪の最後の台詞はもっともっと深く観客に伝わったのではないか・・・そう思うとちょっと残念です。

総評としてはなかなか良かったですよ。
いま、会いにゆきます
この言葉の意味が作品中で分かった時、「やられた!」と思いました。悲しい作品ではなく、勇気の出る作品です。

あと、YOUさんの先生役がなかなかすごい(笑)

(2004.11.4のMy日記を加筆・修正)